#CSC <Cyber Security Club>

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#CSC|第2章【詐欺師/ソーシャルエンジニアリング】

彼…スカイは無言のまま、まるで私の存在すら忘れているかのように歩みを進めた。

 

『久しぶりだね…何処かに旅行でも行っていたのかい?』

 

おもむろに話しかけてみた。

 

スカイは無言のままだった…

 

私は思い切って、回りくどい言い方をやめ、ストレートに聞いてみた…

 

『何故、伝えるべき人間が私なんだね?』

 

それまで何も話さず、ただひたすら公園を後にしていたスカイが突然歩みを止めた。

そして、少しうつむき加減だった顔をスッと上げ、真っ直ぐ前を向いてこう言った。

 

『僕にも分かりません…ただ…貴方に話した方がいいと"感じた"からです』

 

彼はこう続けた…

 

『ラップトップ 1台で、人の生死をもコントロール出来る…俄かには信じがたい事かもしれませんが、いくつもの負の要素が重なり合い、精神的に壊れていく人達と、システムでコントロールされた中で"生かされている"人達…

そして、その現実(リアル)と、インターネットが生み出した"境界線の無い"世界が繋がった時、それは可能になるんです』

 

私はスカイの横顔を見ながら、まるで戦場から帰還した兵士が、戦場で見た凄まじい光景がフラッシュバックしているかのように語るその姿に、ある種の哀れみに似た気持ちでスカイをじっと見ていた。

 

#CSC|第1章【空】vol.3

その日は日差しの強い暑い日だった…。

 

冷たい麦茶をマイボトルに入れ、昨夜作ったiTunesのプレイリストをiPhone7plusで再生し付属品のイヤホンで聴きながら散歩へと出掛けた。早くAir Podsが欲しい…。

 

実は年甲斐もなく、"赤いiPhone"を使っている。

 

そう。iPhone7plus (PRODUCT)REDだ。

 

256GBだが、ただ単に"大は小を兼ねる"という理由だけだ。通話を殆ど利用しない私にとっては、耳元で"赤"をアピールする機会も少ないが『世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)』に寄付されるという事なら、年寄りが"赤いiPhone"を使っていても其れ程恥ずかしがる事はなかろう。

 

橋を渡り左に曲がると河川敷へと下りるスロープがある。そこを下っていくといつもの川沿いの公園が見えてくる。

 

そのスロープを下り始めた頃、イヤホンから聴こえてきたのが井筒昭雄のLOG INだ。

 

この曲は"あるドラマ"の挿入歌で、私はそのドラマが好きだった。もう、だいぶ前のドラマだが…。

 

そして、ドラマの様々なシーンを思い出しながらLOG INを聴きながら公園へ向かった…。

 

彼…スカイは居ないかと…

 

すると突然よろめくようにバランスを崩した。

 

【ドン!】

 

<痛い!>

<あっ…すいません!ついよそ見をしてしまって>

 

私はスカイの事ばかり考えてよそ見をして歩いていた為、キャリアウーマン風の細身の女性とぶつかってしまった。暑さの仕業だろう、あまり見かけないサテンブラウスの胸元を少し開けたそのロングヘアの女性は持っていたA4サイズ程の封筒を落としてしまい、私が拾おうとしたら慌てて直ぐに拾った。

 

《よほど大事な会議資料か何かだろうか…かなり慌てた様子だったな…》

 

ともあれ直ぐに謝り、決まり文句のように《お怪我はありませんか?》などと言ったがあまり彼女が綺麗な女性だった為に、正直、言葉を失っていた。

 

彼女は何も言わず、軽く頭を下げただけで足早に去って行った。

 

私もきちんとお詫びの言葉を発し、その場を後にした…

 

20mくらい歩いただろうか…

 

ふと、彼女が気になり後ろを振り返った。

 

綺麗な女性に年甲斐もなく色めき立った訳ではない。何故だか気になったのだ。

 

片方のイヤホンをそっと外し、足早に去って行く女性の後ろ姿を見ながらふと思った…

 

【彼女とは何故かまた会える気がする】と…

 

そんな根拠のない事を考えながらいつもの公園に来た時…私は全身に電気が走るような感覚と得体の知れない動悸に見舞われた…

 

目線の先にあるベンチには…

 

居た!!!

 

スカイが座っていたのだ!!

 

まるで、周囲は彼の存在に気付いていないかのようだった。様々な人の流れがあるその公園で、まるで彼と私だけが別次元に居るように動きが止まっている。まさにバーチャルリアリティのようだった…

 

『や…やぁ…また会ったね』

 

彼はそっとラップトップを閉じた。

 

そして…こう言った。

 

『これから少しお時間ありますか?伝えたい事があります』

 

私はこの瞬間から、時刻を確認するのをやめた。 

 

 

『あぁ。もちろん!』

 

 

 

そして彼と私はゆっくりと歩き始めた…

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#CSC|第1章 【空】vol.2

ある雨の日。

 

 私はいつもの川沿いの散歩をお休みし、ニュースアプリでニュースを見ながら自宅のソファーでくつろいでいた。

 

私はインフォメーションテクノロジー(IT)にとても興味があり、素人ながらにインターネットやスマホSNSなどを使ったりしている。

 

その為、素人がてらにいつもIT系のブログやテクノロジーの最新ニュースを頻繁に更新しているアカウントをフォローしたりサイトを見たりしている。

 

テクノロジーの進化のスピードはあまりにも速く、私などは全然追いついていかないが、最近のニュースでサイバー攻撃ランサムウェアなどというキーワードをよく目にする。

 

よく言われるハッキングとか乗っ取りなどという類いのものだろうか…。

 

私もネットを利用していると思う事がある。

 

それはやはり現実社会と同じで、ネットの世界にも光と闇はあるという事はよく分かる。

 

ただ、この《よく分かる》が微妙で、"危ない"や"騙される"などというレベルでは分かるが"理解している"レベルには到底達していない。

 

私はそうした不安や漠然とした危機感をどうにかしたいと思っていた。だが、いざとなると誰に…何処に聞いたり、どんなサイトを見たりすればいいのかが分からないでいた。

 

そんな時に彼に出会った。

 

私は咄嗟に《彼に聞こう》と思った。

 

ベンチに座り、背中を丸くし、膝の上に置いたMacBook Airのキーボードを優しく操作し、うつむいたその姿は画像検索などに出てくるハッカーそのものだった。

 

そして、この物語の冒頭

#CSC|出会い

http://sky-hirono.hatenablog.com/entry/2017/05/28/140422

 

に書いたように

 

<誰かが本当のことを伝えなければ...>

 この言葉こそが私が咄嗟に《彼に聞こう》と思った理由そのものだ。

 

その容姿と囁くように放った言葉を聞けば、サイバーセキュリティーやらランサムウェアなどという、私にとっては呪文のようなキーワードも《彼なら知っている》と思っても不思議ではないのは分かって貰えるだろう。

 

決して質問好きのウザい老人と思われたくは無いのでね。

 

だが…

 

彼は…スカイは姿を見せてはくれない… 

 

<そろそろお夕飯にしますか?>

私の想いとは裏腹に、台所から明る優しい声で妻が私を呼ぶ。

 

 

おもむろにソファーから立ち上がり、出窓の窓越しに外を眺めると、雨は小降りになっていた。鮮やかに黒色になった家の前のアスファルト道を、宅配業者のトラックが水しぶきを上げて通る。

 

またいつかスカイに会いたい…

 

あの川沿いの公園で…

 

そう思いながら私は出窓のカーテンを閉めた。

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#CSC|第1章 【空】

あれから数日。

彼は姿を現さなかった。

 

あれだけ質問責めをしたんだ。大抵の人間は私がウザいと感じ、私の行動範囲には姿を見せないのが普通だろう。

 

聞くに落ちず語るに落ちるとは、まさにこの事だ。

 

彼の事を知りたいなら聞く耳を持つべきだった。

 

ところが私のような《自己主張が強い人間》はそれが出来ない。相手を思いやり、相手の立場に立って物事を考える事が出来ないのだ。

 

私もLINEやTwitterなどを素人ながら始めてみた。

 

ところが、やはりこの性格のせいで、質問だけのメンションを飛ばしてしまったりトークもいつしか話をそらしてしまう。上手く伝わらなければスタンプの嵐。

 

コミュニケーションというのは、リアルでもバーチャルでもルールやマナーがある。

 

それは分かっていてもやはり時として自分本位に発信してしまう。

 

小さなスマホの小さなキーボードから放たれるテキストは大きな大きな影響力がある事を忘れてはならない。

 

そんな後悔に苛まれながら私はAppleWatchのディスプレイをタップし、いつものアクティビティのエクササイズを示す緑色の円を完成させるべくワークアウトのウォーキングに勤しむ日常を過ごしていた。

 

そんな日々の中、ふと空を見上げ眩しく降り注ぐ陽射しに手をかざすと、陽射しの中から彼がこちらを見ている気がした。

 

(ひょっとして…今…彼は…この境界線の無い"空"のように、インターネットの世界で自由に飛び回っているのではないか…)

 

彼の名前もまだ聞いてなかったな…。

 

名前も知らない彼の事を私は【空|スカイ】

 

そう。

 

スカイと勝手に呼ぶ事にした。

 

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#CSC|Ribashi

私はスマホでゲームに興じる時がある。

 

パズドラやモンスト グラブル コードレジスタ など、名前は聞いた事はあるがそれらのゲームは苦手だ。

 

ソリティアやオセロといったボードゲーム系しかやらない。

いや。やらないというより"出来ない"といった方が正しいだろう。

 

RPGなどはストーリーが進む途中に流れる動画のクオリティに感動して見ているだけで、アイテムやスキルや属性を駆使して戦うなどという複雑な処理は私には無理だ。

 

DOS-V の頭脳で Core i7 な皆さんと同じゲームは出来る訳が無い。それだけ古い人間という事だ。

 

のんびりとした風景の中、私はまた川沿いを散歩している。

 

そして…

 

何故か私はあの"彼"を探している。

 

MacBook Airの"彼"を…

 

人は誰しも《無意識に気になる人》が居る時は無いだろうか。まさに"彼"は私にとって《無意識に気になる人》、そのものだった。

 

少し雲が出てきて、初夏の強い日差しが弱まり、視界がクリアになってきた私の視線の先にその姿はあった。

 

込み上げる喜びとドキドキした不思議な感覚が全身に流れる。

 

いつものたわいもない散歩が"彼"というプラグインの登場で、飛び切り楽しいものになってきた。

 

『やぁ。また会ったね。今日もここで仕事かい?君はプログラマーなのかい?Macかい?やっぱりクリエイティブな人はMacBookが似合うよね。何か飲むかい?そこの自販機 Edy使えるから便利なんだ。イヤホンはbeatsかい?私はAirpodsが欲しくてね。』

 

私は"彼"に会えた喜びのあまり、まるでクラスの好きな男子のLINEをゲットして夕食からバスルームの中、さては布団の中までスマホを持ち歩き、何度もトークを送る<ちょいウザ女子>そのまんまのような質問責めをしてしまった。

 

《後悔先に立たず 》とはこの事だ。

 

"彼"はおもむろに立ち上がるとMacBook Airを脇に抱え去って行った。

 

こう、言い残して。

 

<オセロ…好きですか? 黒が白に裏返る時…あんな風に簡単に裏返る事が出来たらいいですね…>

 

 

そう語る彼の眼はまるで、ガイ・フォークスのマスクのようだった…。

 

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#CSC|出会い

ここは、都会から離れた静かな山間の小さな村。

のどかな田園風景の広がる、自然豊かな村。

 

私は一人、初夏を迎える汗ばむ陽気の中、涼しげな川沿いを散歩していた。

 

そんなのんびりした空気が流れる中、河沿いにある公園のベンチには一台のラップトップが...

 

青く澄んだ空の向こう側、インターネットの闇の世界の入口がそこにあった。

 

彼は何も話さなかった。

 

静かにMacBookを閉じるとこう言い残して去って行った。

 

 

<誰かが本当のことを伝えなければ...>

 

 

私はこの言葉の意味を理解するまで、そう時間は掛からなかった...

 

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